日々の想い

子どもたちへの想いや母の日常をつづります

寿命まで精一杯生きる~必ずすべてのものに死は訪れる

子どもたちと離れ離れになったとき

生きる意味を失った

 

子どもたちは元夫と共に

家族で暮らす街から

遠く離れた地方にある元夫の実家へ

 

私は

病気が治るまで(心の病気扱いされていた)

私の実家に行くようにと

 

その日から私たち母子は一緒に暮らせなくなった

 

子どもたちと暮らした街で

死んでしまおうと思った

 

私は新幹線に乗って

一人あの街へ戻った

 

実家のある街になんか

帰りたくない

 

ここで死んでしまえば一生この場所に居られる

 

廃止になるため引き払った社宅の

誰もいない最上階の踊り場に座り込み

ビニール袋を被った

 

窒息しようと思った

 

でも無理だった

 

若者が集まるファッションビルが

立ち並ぶ通りに行った

子どもたちとよく歩いた場所

 

そこにあるビルから

飛び降りようと思った

 

階段で登れて

簡単に手すりを跨げるような

そんなビルはないか・・

 

探すとすぐに見つかった

 

上の方の階まで行った

 

道を行き交う豆粒みたいなひとたちを

上からじっと見つめていた

 

手すりを跨いでしまう勇気なんてなくて

階段の踊り場にしゃがみこんだ

 

緑色に光る艶ややかな虫

カナブンだろうか

のそのそと歩いている

 

時折ビルのテナントの裏口が開き

従業員のようなひとが

踊り場に出てきた

 

目が合って会釈すると

そのひとも

なにも言わずに普通に会釈を返した

 

こんなところにひとがいるのは

特に珍しくもないのだろうか

なにか言われやしないか・・

と一瞬ひやっとしたが

なにも話しかけられることはなかった

 

何時間も何時間もそこにいた

 

時折下を見ては

ふぅとため息をつく

そしてまた何をするでもなくしゃがみ込む

 

暮れていく空を見ながら

ああここに一生住んでいたかったなぁ

子どもたちの故郷

子どもたちの未来

子どもたちの友だち

家族の歴史・・・

計画を立てていた様々なこと

 

すべてすべてなくなろうとしているんだなあ

 

ここでもし私が本当に死んだら・・・

 

義母や元夫は言うだろう

 

・・・やっぱりさくらさんは病気だったんじゃ・・・

 

そして子どもたちの心にも

取り返しのつかない傷がつく

 

そんなことになってはいけない

そんな風に思われたくない

 

そろそろ帰ろう

 

私は腰をあげた

 

帰りたくないけれど

実家のある街に帰ろう

 

悲しみと悔しさと寂しさと喪失感と

いろんな感情がまぜこぜになって

 

家族でここに戻ってこれたらと思った

 

けれど戻ってくることは叶わなかった

 

ただ一つだけ言えることがある

 

あの時

ビルの上から

飛ばなくてよかった

飛べなくてよかった

 

今私はあれだけ帰りたくなかった

実家のある街で

毎日一生懸命生きている

 

そして長男とは関係を回復することが出来た

 

今生きていてよかったと心から思う

 

家族は戻れなかったけれど

元夫は婚活をして

私とは違う誰かと愛を育もうとしているけれど

まだ次男と長女には自由に会えないけれど

 

生きている

 

そのことは

素晴らしいことだと思う

 

死は必ず誰にでも訪れる

不老不死の生き物はひとを含め

いまだかつてない

 

死はすべての生き物に与えられたギフトだとも思う

 

生きることにゴールがあるのだから

そこまで精一杯生きればいい

 

良いことも悪いこともあるだろう

辛いことも嬉しいこともあるだろう

喜びも悲しみもあるだろう

 

それらをしっかりと味わい尽くすのだ

 

生きている

 

この奇跡の時間は短く儚い

 

起こることすべてに学びがあり

意味がある

 

そして

起こることすべては最善で

 

乗り越えられない試練はない

 

人生は遊園地

人生はゲーム

 

そして人生は夢

 

 

生きているという奇跡に感謝しながら

生きているという幸せを感じながら

 

なにがあろうとも寿命まで精一杯

自分を愛し大切にしながら生きていく